私達は個々の症例の検体(病理組織)を徹底的に解析することを通して各臓器癌(特に腎癌、胃癌、膵癌)の病因、病態のメカニズムの解明を目指している。特に病因、病態を支配する遺伝子の同定が重要であると考え、臨床医と連携して生検組織、手術組織、ならびに剖検組織における遺伝子異常を解析している。


1) 臨床検体を用いた癌のゲノム解析(マイクロアレイを用いた解析)

外科的に切除された癌組織からレーザーマイクロダイセクションにより癌細胞のみを切り取り、そこからゲノムDNAならびにRNAを抽出して、癌細胞に起こっているゲノム異常を解析している。ゲノム異常の網羅的解析はマイクロアレイを用いたアレイCGH解析、トランスクリプトーム解析、microRNA発現解析、高度メチル化領域の網羅的解析を行っており、癌のゲノムプロファイルに基づく病型分類と癌の病態を支配する遺伝子の同定を目指している。さらに同定された遺伝子の機能解析を行うことで、それぞれの癌における病理学的意義を明らかにしたいと考えている。


2) 東アジアにおけるヘリコバクターピロリ菌感染症の分子疫学的研究

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染は、胃炎を引き起こすのみならず、慢性化した炎症が数十年後に胃癌発症の引き金になることが知られている。ピロリ菌は世界中で蔓延しているが、なぜか胃癌は東アジアに多い。これらのことから、ピロリ菌感染症に続発する胃癌発症には、ピロリ菌の菌側因子と炎症を引き起こす宿主側因子の両方が関与していると考えられている。東アジア諸国と共同研究を展開して、ピロリ菌の遺伝子型の分子疫学的解析を行っている。