本院で膵癌の治療を受けられた患者さん・ご家族の皆様へ
~手術時 (1991 年 4 月から 2018 年 12 月まで) に摘出された癌組織の医学研究への
使用のお願い~

【研究の目的について】
癌は遺伝子の病気だということが最近、明らかになってきました。遺伝子の病
気といっても親から子へ伝わっていく遺伝的な病気ではなく、体細胞の遺伝子
(例えば胃の細胞や肺の細胞の遺伝子)が量的あるいは質的に異常を起こし、正
常な細胞増殖の制御機構が働かなくなり自律的な増殖をするようになると、癌
が出来ると考えられています。胃に出来る癌(がん)である胃癌は、通常手術に
よって治療されますが、有効な抗癌剤が少なく、薬で治すことが難しい癌の一つ
です。昔の抗癌剤は癌細胞だけでなく、正常細胞にも毒性が強いため強い副作用
がありましたが、最近の抗癌剤は、癌細胞のみに存在する異常遺伝子が作り出す
蛋白質を標的にしており、癌細胞だけを狙い撃ちに出来るようになってきまし
た。逆に、新しいタイプの抗癌剤の効果を高めるためには、患者さんの癌細胞の
異常を認める遺伝子が何かがわかっていなければなりません。特定の遺伝子異
常をもつ癌に対して特異的に効果が期待できる抗癌剤は、その遺伝子異常を持
っている癌には効きますが、もたない癌には効果が余り期待できません。ですか
ら、患者さんから手術時に摘出された癌組織の遺伝子異常を詳しく調べること
で、どのような抗癌剤が有効かを予測できると考えられます。医療の現場では、
既に特定の癌(例えば乳癌や肺癌)において、特定の遺伝子異常を検査すること
が、抗癌剤を投与するかどうか決める有力な診断手段となっています。しかし、
残念ながら胃癌ではそのような分子標的は未だ少なく、薬で癌が治癒するレベ
ルには達していません。
本研究では、膵癌の患者さんから治療目的で摘出された癌組織を用いて、遺伝
子異常を徹底的に調べること(具体的にいうとタンパク質の有無や量的異常に
ついて調べます)で、将来膵癌の患者さんにはどのような既存の治療薬が効く可
能性があるのかを予測できるようにしたいと考えています。さらに、全く新しい
異常を認める遺伝子が発見できれば、それを攻撃する新しい抗がん剤の開発に
も役立つと考えています。
【使用させていただく組織(試料)等について】
本院におきまして、既に膵癌の治療を受けられた患者さんの癌組織(試料)を
医学研究へ応用させていただきたいと思います。その際、癌組織を調べた結果と
診療情報(例えば治療効果がどうであったかなど)との関連性を調べるために、
患者さんの診療記録(カルテやレントゲン写真など)を調べさせていただくこと
もあります。なお患者さんの癌組織(試料)及び診療記録(カルテ)を使用させ
ていただきますことは本学医学部倫理委員会において外部委員も交えて厳正に
審査され承認された後に行います。また、患者さんの試料および診療情報は、国
の定めた「臨床研究に関する倫理指針」に従い、匿名化したうえで管理しますの
で、患者さんのプライバシーは厳密に守られます。当然のことながら、個人情報
保護法などの法律を遵守いたします。
【使用させていただく組織(試料)の保存等について】
癌組織(試料)の保存は5年間(2019 年 10 月 1 日から 2024 年 9 月 30 日ま
で)を基本としており、研究終了後は、癌組織(試料)を焼却処分します。ただ
し、研究の進展によってさらなる研究の必要性が生じた場合は5年間を超えて
保存させていただきます。
【患者さんの費用負担等について】
本研究を実施するに当たって、患者さんの費用負担はありません。また、本研
究の成果が将来薬物などの開発につながり、利益が生まれる可能性があります
が、万一、利益が生まれた場合、患者さんにはそれを請求することはできません。
【研究資金】
本研究においては,公的な資金である大分大学医学部分子病理学講座ならび
に消化器・小児外科学講座の寄付金を用いて研究が行われ,患者さんの費用負担
はありません。
【利益相反について】
この研究は,上記の公的な資金を用いて行われ,特定の企業からの資金は一切
用いません。「利益相反」とは,研究成果に影響するような利害関係を指し,金
銭および個人の関係を含みますが,本研究ではこの「利益相反(資金提供者の意
向が研究に影響すること)は発生しません。
【研究の参加等について】
本研究へ癌組織(試料)を提供するかしないかは患者さんご自身の自由です。
従いまして、本研究に癌組織(試料)を使用してほしくない場合は、遠慮なくお
知らせ下さい。その場合は、患者さんの癌組織(試料)は研究対象から除外いた
します。また、ご協力いただけない場合でも、患者さんの不利益になることは一
切ありません。なお、これらの研究成果は学術論文として発表することになりま
すが、発表後に参加拒否を表明された場合、すでに発表した論文を取り下げるこ
とはいたしません。
患者さんの癌組織を使用してほしくない場合、その他、本研究に関して質問な
どがありましたら、主治医または以下の研究責任者までお申し出下さい。

【研究責任者】
879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘 1-1
大分大学医学部分子病理学講座 准教授 泥谷直樹
電話番号 097-586-5693